おばちゃんDays

調理師たき子によるオオサカのおばちゃんブログ

学校給食のオキテ26箇条(中編)     ♦転職DAYS 番外編♦


こんにちは、たき子です。

前編では給食の基礎知識や一日の仕事の流れをご紹介しました。


中編ではいよいよ給食ならではのオキテをお届けします。





その1 健康診断を受ける必要がある

はじめて学校給食の現場に入る前に、健康診断の提出が求められます。
学校で働くにあたり、教職員が結核に感染していない事の証明が必要だからです。

健診は一年に一回義務づけられています。
入社後の多くは、健康診断費用を会社が負担してくれますが、入社前は個人負担です。

健診は病院によってピンキリで、6000~25000円ほどかかります。
安いところで受けるのが懸命かと思います。



その2 検便を提出する必要がある

サルモネラ菌などに感染していないか、夏場は2週間に一度、冬場には1か月に一度検便を提出する必要があります。
最初に働き始める前にも提出が必要です。



その3 牡蠣や二枚貝を食べられない

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牡蠣や二枚貝を食べることを制限されます。
制限というか、食べないよう言われます。
特に「牡蠣は絶対食べないで!」と言われます。

ノロウイルスに感染するリスクがあるからです。

つい最近も、東京と和歌山の小学校給食でノロウイルスによる集団食中毒が発生し、その感染源がきざみ海苔だとわかって驚かされました。
大規模な集団感染をひきおこすので、学校給食ではノロウイルスは脅威です。
そのため牡蠣は忌み嫌われているのです。

牡蠣が大好物という人にとっては辛い職場かもしれません。



その4 ノロの疑いだけでも大変

ノロウイルスの恐いところは、感染していても症状が表にでない人がいることです。
ですから知らないうちに職場に拡がっていたなどということになりかねません。

もし家族に下痢や嘔吐などの症状が表れたら、ノロウイルスの可能性があるというだけで、その調理員は即出勤停止にさせられます。

本人に症状がなくてもノロウイルスかどうかの検査を受け、シロの判定が出るまで出勤できないのです。

もしも感染していれば、ウィルスが出なくなるまで1週間程度休むことになりますし、自分が感染しておらず家族が感染していても同じです。

また、調理員の一人がノロウイルスだと診断されると、その現場の他の調理員全員がノロウイルスの検査をさせられます。

そして万が一、誰かに感染していれば、それは現場で感染したのだと判断され、消毒などのため係員が派遣されるそうです。
私の勤めていた現場では調理員同士の感染が起こったことはありませんが。

現場での感染と判断された場合、潜伏期間があるので、感染している調理員も、感染していない調理員も出勤停止となります。自動的に、時給で働くパートさんなどは収入も減ります。

休まれた現場も大変です。給食を休むわけにはいきませんから、他の現場からヘルプに借りだされたり、なんとか寄せ集めてしのぐのです。

そんなリスクを犯してまでして、こっそり牡蠣を食べる勇気のある調理員はあまりいないと思いますが、牡蠣を食べなくても、子どもなどは学校で感染しますよね。

子どもはよく下痢など起こしますし、その度に仕事を休むと有休なんてあっという間になくなってしまいます。

パートさんの多くが小学校以下の子どもを持つ主婦なので、冬場は特に戦々恐々なのです。



その5 手傷を作れない

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黄色ブドウ球菌は人の体に普通にいる菌ですが、傷には特に多く集まっています。
このため、手傷をしていないか、毎朝チェックします。

傷があり化膿していれば仕事はできません。
化膿していなくても、傷があれば絆創膏を貼りラテックスの手袋をはめ、なおかつ行える作業が制限されます。
自動的にその日一日は、下処理という肉や魚、卵などを扱う係に任命されることになります。

このため傷をしないよう普段の生活でも常に気を付ける必要があります。

でも、家でも職場でもうっかり手を切ってしまうこともありますよね。
刃物を扱う仕事なのですから特に手は切りやすいです。
そんな時には、いっこくも早く治すよう躍起になるのです。(躍起になったからといって治るものでもありませんが)


その6 手を洗いたおす

手洗いは徹底して行います。
調理開始時やトイレのあとはもちろんですが、作業が変わる度に手洗いを行います。

例えば、野菜を切ったその後で豆腐を切るという時も作業が変わるので手を洗います。
肉を炒め、次に野菜を炒める時にも洗います。
できた料理をよそい分け、他の料理をよそう時にも手を洗います。

とにかく、一日中洗っており、一日に少なくとも30回、多ければ50回くらい洗う必要があります。
潤いなんてすっからかんになります。
ハンドクリームを塗っても塗っても追い付きません。
もちろん作業中はハンドクリームを塗れないので休憩時間や作業終了後になります。
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その7 爪を伸ばせない

爪の中にはバイ菌が多く存在します。
爪は常に短くしなければなりません。
もちろんマニキュアも御法度です。

始業前に毎日点検しますし、会社の衛生点検でチェックしたり検査液をかけられたりもしますし、たまに大阪市からの抜き打ちの衛生点検も入るためごまかすことはできません。



その8 おしゃれはできない

ピアスや指輪はもちろんのこと、つけまつげやエクステなども禁止です。
落ちて給食に入ってはいけないからです。
髪をまとめ、帽子を被っての作業なので髪はぺちゃんこになります。


その9 夏は暑く冬は寒い

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大阪市の場合はほぼ、給食室にエアコンの設備はありません

夏は暑さを通り越します。
調理中は防虫のため窓は網戸であっても開けられません。
換気扇だけが頼りですが、揚げ物などの時は平気で40℃を越えます。

調理後の洗浄作業では窓は開けますが、洗いはお湯なので、湿度はガンガンに上がります。

冬は冬で半端なく寒いです。

朝の室温は10℃を下回っている事も多いです。
本格的に火を使う作業が始まるのは10時30分頃からですから、それまでは白衣の下に厚着をして耐えることになります。
特に、朝の野菜洗いでは、フルーツなど絶対冷水で洗わなければならないものも多くあり、手先は死人のようになります。



その10 水分補給がしづらい

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それほど暑くても思うような水分補給ができないこともあります。

調理室は私物の持ち込みが禁止されているので、水分補給するためには、いったん調理室を出なければならないからです。

飲んではいけないとは言われませんが歓迎もされません。
もちろん、再度調理室に入る時は手洗いです。
面倒なので我慢してしまうことが多いです。
 
夏場の洗浄作業中などは、水道の蛇口からそのまま飲む人もでてきます(手洗い用水道)。



その11 作業中トイレに行きにくい

トイレの場合はもっと面倒です。

調理室を出て白衣、帽子、マスクなど全て脱ぎます。白衣のズボンも脱がなければならない現場もあります。こうした現場では、休憩室でパンイチを避けるため、白衣の下には夏でもスパッツ等を履く人が多いです。

トイレから出たら、またマスクをして帽子を被り白衣を着て全身にコロコロをかけ、調理室に戻ることになります。

トイレで手を洗っていても、またここでも手を洗わなければなりません。
トイレが近い人向きではないかもしれません。



その12 メモやペンは持ち込めない

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調理室は調理器具以外の持ち込みは禁止です。
輪ゴムやクリップはもちろんですが、個人のメモやボールペンなども持ち込めません。

仕事を始めて慣れないうちは覚えることが多いのにメモれないので記憶力が頼りとなります。
脳トレには良いと思います。



その13 ロング手袋を使う

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洗浄用のシンクは深いため家庭用のゴム手袋では役に立ちません。

多くの人は肘の上まであるロング手袋を使っています。肘の上というより肩の下、脇の辺りまであります。

支給してくれる会社とそうでない会社があります。
支給してくれない会社では個人で購入せざるをえませんが、高いです。
ホームセンターなどで販売していますが、1双で、パートの時給と変わらない位の値段のものが多いです。

それなのに、一日で穴が開いたりすることもあると泣きたくなります。



その14 手袋を使えない現場もある

現場責任者の考えによっては、ロング手袋をはじめとした手袋を洗浄の時に使わせてもらえないこともあります。

汚れがちゃんと落ちているか確認のため素手にこだわるのです。

使ってもいいと言われても、誰も使っていなければ使いづらく、結局使わないというケースもあります。
肌の丈夫な人に弱い人の辛さはわからないようで、管理者に「そのうち慣れるから」と言われたりします。

肌の弱い人にとってはキツいかもしれません。



その15
 皮膚炎をおこしやすい


手袋を使えたとしても、全ての洗浄を手袋をはめて行えるわけではありませんから、手荒れは避けられません。

私はアトピー性皮膚炎を発症し、一時期は仕事を続けるのが困難なほどひどい状態になりました。
皮膚科に通い続け、ましにはなりましたが、完全に治癒することはありませんでした。

また、ホウレン草やトマト、里芋、メロンなどの食材は接触によって手が痒くなる人もいて、アレルギー体質の人はなるべく避けて作業していました。



その16 腱鞘炎になりやすい

調理師の持病ともいえる腱鞘炎ですが、大量の食材を扱うため給食では発症しやすくなります。
腱鞘炎は一度かかると治りにくいやっかいな病気です。

学校給食のオキテ26箇条 後編に続く
学校給食のオキテ26箇条 前編はこちら