おばちゃんDays

調理師たき子によるオオサカのおばちゃんブログ

学校給食のオキテ26箇条(後編)     ♦転職DAYS 番外編♦

学校給食のオキテ26箇条(中編)より続き



こんにちは、たき子です。

学校給食のオキテ26箇条の続きです。

その17 作業区分が鬼ほど明確

作業は分担性です。

衛生面での区分けで、大きく3種類の担当に分けられます。

1番目は下処理といって、肉や魚を扱う(解凍したり釜に投入したりする)人です。
一度下処理担当になると、その日一日は出来上がり品を扱う作業には戻れません。

作業部屋も別のスペースに隔離状態で、決められたタイミングでしか調理スペースには立ち入ることができません。

調理スペースに入る時も靴を履き替え、
「肉通ります」と大声で声かけしてから入ります。
すると回りの人は道を開け、下処理の人と接触しないよう退きます。
調理スペース内での作業が終われば下処理の人はなるべく早く下処理室に戻らなければならないのです。

2番目は調理する人です。
直線生肉や生魚は触りませんが、野菜などの出来上がる前の食材を触ることができます。
メインの仕事なので、主に社員が担当します。

3番目は、出来上がり品をクラス別に分ける配缶と呼ばれる作業の人です。
専用のエプロンを着用し使い捨て手袋をはめます。
配缶のかっこうをしたとたん、出来上がり品と食缶(出来上がり品を入れクラスに運ぶバケツのような物)以外触れなくなります。
手術室に入る時の執刀医のように、どこにも触れずに移動します。
肘で引き戸を開けたり、足で作業台を蹴るように移動させることがありますが、行儀悪いわけではないのです。

たとえ他の作業が忙しくても、その状態で他の作業を手伝うことはできません。

トングなどを落としても配缶の状態で拾うことはできないので、調理の人に拾ってもらいます。

現場によっては、調理の人と配缶の人とが立ち入れる場所を完全に分けていることもありますし、食缶や食器を入れている乾燥庫を配缶の人しか触れないこともあります。
調理の人が食器や器具を乾燥庫から出せないため、必要な場合は、配缶の人に頼んで出してもらうのです。



その18 激務の下処理担当

大阪市では、肉や魚は冷凍で当日の朝に配達されます。
牛肉や豚肉や挽き肉はバラ凍結の状態なので扱いやすいのですが、問題は鶏肉です。鶏肉は大きな塊の板状で納品されます。
よく、業務用のスーパーなどにある、2キロの塊のあんなやつです。
こうした鶏肉や液卵は流水解凍しなければいけません。

解凍のためのお湯は厳禁なので水しか使えませんが、冬場は特になかなか解凍できません。
いったん鶏肉を袋ごと別のポリ袋などに入れて解凍しなければならないのでなおさらです。
袋と袋の間にある空気が邪魔して、なかなか溶けないのです。

量が少なければまだしも、唐揚げなど鶏肉がメインの時などはたまったものではありません。下味を早くつけたいため、調理担当からも急かされます。下担当泣かせの食材なのです。

複数の食材が重なった時もまた大変です。
例えば献立が
「スープ煮、焼きプリン、キャベツサラダ」
の場合、スープ煮用の鶏肉と、焼きプリン用の液卵牛乳の用意が下処理の担当です。

鶏肉と液卵を流水解凍し(それぞれ違うエプロンで)、一回目の液卵を出し、エプロンを替えて手を洗って使い捨て手袋をはめて一回目の牛乳をを出し、またエプロンを替えて手を洗って使い捨て手袋を替えて鶏肉を出します。
そして、また二回目の液卵と牛乳を、それぞれエプロンを替え手を洗い手袋を替えて行わなければならないのです。

こうした激務の下処理担当ですが、多くの現場ではパートさんが交代で担当します。
社員は調理に入るので下処理には入らないことが多いからです。



その19 作業着は支給とは限らない

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コックシューズや長靴、白衣といった必要不可欠なのは必ずしも支給されるとは限りません。

自分で揃えなければならない会社もあります。
募集広告に「制服貸与」の記載があるか確かめたほうが良いです。



その20 洗濯物が多い

白衣は自分で持ち帰って洗うのが基本です。

しかも、他の洗濯物とは分けて洗うよう言われます。
夏場は特に何回も着替えます。皆、大きなカバンを持ち歩くことになります。中には、現場にある洗濯機で白衣を洗って干せるケースもありますが、洗浄作業後に書類記入のため残って仕事をする社員と違い、洗浄後すぐに退社するパートさんは持ち帰って家で洗うしかありません。

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その21 食材チェックに命をかける

大阪市では、三度豆はほとんど冷凍の物です。
冷凍もそうでないものも、三度豆は虫の多い食材です。
よく見ると、小さい穴があいているやつがあります。中を開くと、白い幼虫が見つかるケースも珍しくありません。

私が働いていた現場では三度豆は1本1本点検していました。

万が一そのまま児童の給食に入っていても、防虫剤を少なく使っているから健康な野菜の証拠なのだと先生がフォローしてくれたりします。
かといって度々虫が見つかるのは考えものなので、必死になって三度豆の穴を探す事になるのです。


そんな嫌われものの三度豆ですが、大阪市の給食では、しょっちゅう登場します。
スープ煮、筑前煮、和え物など多いときは週に3回位入ってきます。
煮物の彩りならまだ量も少な目ですが、三度豆のサラダ、三度豆の炒め物などは量もうんざりするほど多いです。

三度豆同様、干し椎茸も虫の発見されやすい食材です。小さいシマ模様の幼虫が傘のひだに隠れていたり、椎茸の中に入り込んだりしています。干し椎茸を戻した後は、傘のひだを丁寧に洗いながら虫がいないかチェックするのです。



その22 数を数え倒す日がある

クラス毎に給食を分けなければいけませんから、数を数える作業はとても多いです。

朝の牛乳、洗浄後の食器は毎日ですが、パンの日はパンの数、マーガリンがつけばマーガリンといった具合です。

シチューなどのメニューの場合は量りで計量するのでよいのですが、魚やハンバーグ、果物などの場合は数を数えます。

さくらんぼの場合などは、一人3個と決まっているので、クラスの人数✖3個ずつ数えなければなりません。

数を数える献立が重なる日は一日中数を数えている気分になります。

もしも食器や食材が足りなければ、児童が取りに来ます。
ただでさえ短い給食時間がさらに短くなるため、極力避けなければなりません。

このため、数を数え間違わないよう、集中して数読みを行います。

食材は、若干の余裕を持った数が届けられますから、最初に届いた全数を数え、余りを割り出します。
予定の余り数より多く残るようなことがあれば、どこかのクラスに足りないということなので、ジドウガ取りに来るまでに必死で数え直すことになります。

特に魚などの身が柔らかい物はは崩れやすいため、数え直しになると溜め息が出るのです。



その23 調理員によって味は変わる

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決められた材料と調味料で決められた手順で作るため本来は同じ水準のものが出来なければならないのですが、なかなかそうはいきません。

大阪市の給食の調理手順はあまり細かい指示はありません。

例えば「おこわ」の場合は餅米を洗って湯につけるのですが、この時の湯の温度までは書かれていません。
餅米をつける湯はお風呂のお湯ぐらいがよく、暑すぎると米が割れてしまいます。
また、水のきり具合、水加減も、手順書はあるものの、最終的には調理員の判断が出来上がりを大きく左右します。

中には、おこわがお粥のようだったというケースもあります。

実際には調理員の知識や技能、経験などによって出来上がりが変わってくるのです。



その24 現場がなくなる事がある

食材チェックなどの食材への手のかけ方は、その現場責任者や学校の方針によって変わります。
しかし、どんなに頑張って虫を見つけたり、異物混入を防いだとしても、それが現場として評価されるシステムはありません。
食中毒などの、よほどの事故がない限り給食会社は入札に参加できます。

その結果、入札に負けてある日突然仕事がなくなることがあるのです。入札シーズンになると皆ハラハラドキドキです。

また、会社として評価されることはないのに、逆に会社として評価が下がる可能性はあります。
食中毒などの重大な給食事故を起こした会社は、その後の数年間入札に参加できません。

自分の現場はちゃんと仕事をしていても、他の現場で事故をおこし、とばっちりを受けて仕事を失う可能性はあるのです。

もしも入札できなければ、社員の多くは他の現場に配属されますが、慣れた職場を変わらなければならないのは嫌なものです。

パートさんの多くは学校の近くから通っているので、会社同士の話し合いで残りたければ委託会社を変わり、そのまま同じ学校に勤め続けられることもあります。
しかし、多くの場合、現場責任者は変わりますから、同じ学校に残ったとしても仕事の仕方が変わるリスクはあるのです。



その25 休みやすいとは限らない

子どもの行事などは考慮してくれる会社が殆んどですが、中には休めない会社もあります。
私は最初に面接を受けた会社から、参観など平日の子どもの行事には行けないと思って下さい、と言われました。

会社の体質なのか、担当者の体質なのかそういう会社も確かに存在します。



その26 募集を鵜呑みにできない

始業は7時からと記載されていた仕事の面接で、6時30分からだと言われたので
「募集には7時とありましたが」と聞くと
「あ、6時30分です」としらっと言ってのけた担当者がいました。

6時30分なら最初から応募しなかったのにと思うと、履歴書を書く労力と面接に行った時間が無駄になり腹立ちを覚えました。



委託会社は選ぼう

以上、小学校給食のオキテ26箇条でした。

大変な点ばかり並べてしまいましたが、もちろん、いい点もあります。
小学生を持つ人は、子供と同じ給食を食べるので、どんなものを食べているかわかりますし、共通化の話題にもなります。
覚えた料理は献立の参考にもなりますし、経験者は重宝されますから、別の給食会社への転職もしやすいです。

でも、給食会社は慎重に選んだほうが良いと思います。

転職しやすいケースが殆んどですが、中には給食会社との話し合いがうまくゆかず、転職後一年間は大阪市の給食で働いてはいけないと言われそれを守っていた人もいました。

求人広告の給料を鵜呑みにして、単に給料が高いというだけで選ぶのは危険です。
何かと理由をつけて、書いてある給料から減らしていく会社もあるそうです。

1年以上働かないと社会保険に加入させてもらえないブラックな会社もあると聞きます。
また、夏休みには社長の自宅を掃除させられたり、会議と称して月に一度責任者を集めてスポンジなどの消耗品を持って帰らせ送料を浮かせようとする会社もあるそうです。
その際の交通費は自腹だというのですから呆れたものです。

できれば実際に実際に働いている人に会社の評判を聞いたほうがいいと思います。



学校の対応によっても大きく変わる

しかし給食会社を選んでも、それだけで良い環境で働けるとは限りません。
栄養教諭や責任者である教頭先生の考え方によって働きやすさは大きく変わってきます。
学校の方針は絶対なのです。

先生の理解と協力があり、働きやすい現場もありますが、そんな現場ばかりではありません。

野菜は全て手切りで行うよう言われる現場もあります。野菜切裁機が設置されてあるのに使わせてもらえないのです。
使われない野菜切裁機なのに毎日洗浄して拭いている現場を知っています。
栄養教諭のこだわりが強すぎる現場は大変です。

こればかりは、いくら会社が良くてもどうにもならないのです。

よほど、知り合いにその現場の情報を知ってる人でもいない限り、入ってみなければわからない世界です。
まあ、働いてみないとわからないというのは、どんな職場にも言えることかもしれませんが。

また、たとえ働きやすい現場だったとしても、栄養教諭も教頭も数年ごとにで転勤になりますから、先生が代われば給食室への要求も変わるリスクは常につきまといます。



まとめ
「それでも悪い仕事ではない」


それでも、夏休みがあるなど、子どもの予定に合わせての休みが取りやすい職場であることは間違いありません。

私は個人的には保育園のほうが大変だと感じていました。
学校給食は一回の量は多いけど作るのは昼ご飯だけで、保育園のように朝昼夕のおやつはありません。

作業が分業性なので、その点でも楽でした。
私の働いていた保育園では、例えばトンカツの場合、自分で肉に衣をつけ、揚げ、クラスの人数を数えながら配缶まで一人で全部やるのが普通だったからです。
学校給食のように、肉に衣をつけて油の釜に入れる下処理の人、揚げる人、配缶する人というように分けるのは忙しすぎて無理でした。

アレルギー食の対応の差も大きいです。
学校給食では除去食も毎日ではないし、除去食のある日でも、一種類の除去食を作ればいいだだけでした。

つまり、保育園では作って洗って作って洗って。
とにかく一日中動いていました。

学校給食は、細かな決まり事は多いのですが、制約が多い分作業は少ないのです。
手伝いたくても手をだせずに手持ちぶさたな時間は結構ありました。
宇宙食なみという、日本の学校給食の衛生基準を満たそうと思うと、おのずと制約は多くなるのです。

もちろん保育園でも、おやつを手作りしない園ではそこまで大変ではないと思います。
カレーやシチューのルウまで手作りを求めない園長なら作業内容も違ってきますし、アレルギー対応食も簡素化すればできるでしょう。
また、私が働いていたのは私立の保育園でしたが、公立ならまた違っていたかもしれません。
しかし、細かい対応という点では、保育園はやはり大変ではないかと思っています。

私は病院の給食の仕事はしたことがありません。他にも、最近では高齢者施設の給食調理の求人募集も増えています。
給食といってもさまざまですよね。

いろいろ書きましたが、私は給食は大好きです。特に食べるのが。
大阪市しか知りませんが、とっても美味しいんですよ!
すでに給食DAYSしてる人、これから始める人、頑張って美味しい給食作って下さいね♪

学校給食のオキテ26箇条 前編はこちら
学校給食のオキテ26箇条 中編はこちら