おばちゃんDays

調理師たき子によるオオサカのおばちゃんブログ

橋本治さんのご冥福をお祈りします

こんにちは、たき子です。

今朝、新聞を見て、一つの記事に目をうばわれました。

作家の橋本治さん(享年70才)が29日、肺炎のためお亡くなりになられたそうです。





橋本治さんとは

橋本治さんは、東大安田講堂事件のあった前年の昭和43年、東大在学中に駒大祭のポスター、

とめてくれるなおっかさん背中の銀杏が泣いている



で注目されました。

卒業後は、イラストレーターを経て作家になり、1977年に第29回小説現代新人賞佳作を受賞したデビュー作『桃尻娘』で一躍脚光を浴びました。

桃尻娘』は、女子高生が一人称で日常を語る。。。というスタイルの小説で、今では珍しくもないかもしれませんが、当時としてはずいぶん画期的な小説でした。



さわりをご紹介すると。。。


 仮にも十五の少女よ、「今日はだめなの」なんて自分の体のメカニズムしりつくしてるような口きける? ヤダア、あたしそんなにすれてないわ。
 初めての女の子が「コンドームして」とかサ、そんなこと言えるわけないでしょう、相手が気がきかなかった場合にィ!
 それとも、「だめッ! だめッ! だめえッ!」って喚き続けりゃいいの? いやよ。処女がそんな事言ったら屠殺場で殺される豚と一緒じゃない。初めてだったらなおさらそんな事言えないわ。どうしてそんな事が分かんないのかしら、みんな。
「だめッ! だめッ!」なんて大人になってからよ、成熟して、素敵だろうなア、そんな事チャンと言えるようになったら。大人になる希望はそれだけネ、今ン所。

      橋本治『桃尻娘』より


…といった、勢いあふれる文章で、それまでのタブーを打ち崩すような小説だったのですよね。

この『桃尻娘』はシリーズ化されており、今でいうボーイズラブを描いた章もあります。

ラフな文体とは裏腹に、根底に流れているスタンスは、あくまでも優しく暖かく、真摯なのです。


清少納言はブロガー?

また、橋本治さんは『桃尻語訳 枕草子』などの古典文学の現代語訳も手掛けています。

 春って曙よ!

で始まる『桃尻語訳 枕草子は』は、橋本治さんに言わせればOLさん(清少納言)の雑記帳なので、あまり格調高く訳すのは変なのだそう。

清少納言は、今でいうブロガーだったのですねw


『恋愛論』がバイブルだった

たくさんの小説や古典文学の現代語訳、評論やエッセイなどを遺しておられる橋本治さんの作品の中で、私の若い頃のバイブルがこれ。



恋愛論』です。

今ではすっかり恋愛ってナニ?
レンと言えばレンコン、アイと言えばアイスだろって私ですが(苦しいもじりだった!)、若い頃は恋愛至上主義だったので、この本の、特に以下の一節は刺さりました。


恋愛っていうのは、自分ていう海の中の離れ小島と“陸地”っていうものの間を、妄想というものをドンドン埋め立てて行くことによってつなぎとめる作業だと思うの。妄想がドンドン捨てられて行くから、恋っていうのは、ちゃんと終わるんだよね。そして、その埋め立てられて、ちょっとずつ陸地が現れて来る、その状態の事を“幸福”って呼ぶんだよね。

       橋本治『恋愛論』より


当時、恋は永遠だと信じていた私にとっては「そんなあ!」と思いつつも、恋の終わりをちゃんと見定めようという覚悟をもつ手助けになった一文です。


透明なブルーの海に潜る

このように橋本治さんの作品の特徴として、軽い文体とは裏腹に中身は常識を疑うようなものが多く、読んでいると深い海に潜ってゆくような感覚になります。

でも、その海は透明なブルーなのですよね。
あくまでも私のイメージですが。



橋本治さんの愛読者である私にとって、今日の訃報は残念でなりません。

比較的新しい著書は読んでいないので、これを機に読んでみたいと思います。

橋本治さん、どうぞ天国でも好きなことを好きなように発信し続けてください。
ご冥福をお祈りします。