朝井リョウの直木賞作品『何者』を読んでミゾミゾした (ネタバレと言うほどではありません)
初めての朝井リョウ
こんにちは、たき子です。
朝井リョウ作品を初めて読みました。
朝井リョウは、「桐島、部活やめるってよ」で新人賞を受賞しデビュー。
気になる作者の一人でした。
「何者」。
直木賞受賞作です。映画化もされていますが観ていません。
映画化で新たにかけられたカバーの表紙は、就活スタイルの有村架純のアップ。
裏返してみると、何やら不穏なキャプションが。
ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかる。
意味がわからないままこの言葉が気にかかり購入しました。
でも正直言うと、最初の10ページを読むのに半月位かかったんですよ。
寝る前、ベッドで眠たくなるまで本や漫画を読むのが日課なのですが、冒頭のライブハウスの場面より先に進めなくて寝てしまうんですね。
冒頭から掴まれるような小説なら寝るのを忘れてどんどん行っちゃうのですが、そんな小説ではなく。
口調が今時の若者ぽいせいか、ところどころにツイッターの画面の記述が入るせいか、冒頭からしばらくは出来事の描写が続き、ちょっと退屈やなと思いながら頑張って読んでいきました。
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});
主人公の内面の描写がおもしろい
面白いなと思い始め、寝ずに読み進めるようになったのは、主人公拓人が心の中でギンジ(元劇団仲間)を批判をしだしたあたりでした。
想像力が足りない人ほど他人に想像力を求める。
などという表現で。
その後、就活をめぐり知りあった隆良に対しても拓人は苦手だ、と考えます。
俺は流されたくないんだよね、就職活動っていう社会の流れに。俺は俺でいきたいから。
などと言ってのける隆良に、拓人は批判的な気持ちを抱きます。
私も、ホンマに隆良って鼻持ちならんやつや、と拓人に同調していました。
襲いかかられました

物語は就活を軸に進み、内定をもらえた者、もらえない者、さまざまな思いが交錯します。
就活生のリアルな心情がつづられ、それはそれで興味深いのですが、読みながらずっと気になっていたのは、やはり裏表紙のキャプションの一文でした。
ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかる。
主人公が誰かに襲いかかるとか、襲いかかられるとかならわかるけど、あなたに襲いかかるってどういうこと?
わけがわからないまま、ようやくラスト30ページに。
最初は意味がわからなかったんです。
何が私に襲いかかってるの?
やがてなんとも恥じ入るような嫌な気持ちになってきて、そうか、こういう事かと気づきました。
作者の狙いはここにあったのか、としてやられた感が満載。
襲いかかられずにすむ人もいるのでしょう。
その人はきっといい人です。
いい人ではない私は悔しいことに襲いかかられてしまいました。
なんとも言えないバツの悪さ。
一昨年話題になって映画化もされた乾くるみの「イニシエーションラブ」も読者に挑戦的ですが、全然違った意味で「何者」も挑戦的な作品。
やられたなー。
何をどうやられたか、それを書いてしまうとまったく読む意味がなくなってしまうのでネタばらしはしません。
奥歯に物が挟まったような表現になることをお許し下さい。
興味があればぜひ読んでみてください。
ただし、襲いかかられることを覚悟のうえで。

【中古】 何者 新潮文庫/朝井リョウ(著者) 【中古】afb
この他の読書感想はこちら
【村田沙耶香の芥川作品『コンビニ人間』が問う“普通”】
【拝啓 有働由美子さま『ウドウロク』読みました】
【『ユリゴコロ』イヤミスを超えた沼田まほかる渾身の傑作】
【三浦しをん『風が強く吹いている』は、箱根駅伝を舞台にしたクレイジーなファンタジー】
【テンション上がりすぎて寝かしつけむけではない?『うんちレストラン』】
【バカバカしさが炸裂!児童書『バカ昔話』】
【流転の海最終章『野の花』に自身の裏切りが重なる】
【二度読み必至のミステリー『お隣さんが殺し屋さん』】
こんにちは、たき子です。
朝井リョウ作品を初めて読みました。
朝井リョウは、「桐島、部活やめるってよ」で新人賞を受賞しデビュー。
気になる作者の一人でした。
「何者」。
直木賞受賞作です。映画化もされていますが観ていません。
映画化で新たにかけられたカバーの表紙は、就活スタイルの有村架純のアップ。
裏返してみると、何やら不穏なキャプションが。
ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかる。
意味がわからないままこの言葉が気にかかり購入しました。
でも正直言うと、最初の10ページを読むのに半月位かかったんですよ。
寝る前、ベッドで眠たくなるまで本や漫画を読むのが日課なのですが、冒頭のライブハウスの場面より先に進めなくて寝てしまうんですね。
冒頭から掴まれるような小説なら寝るのを忘れてどんどん行っちゃうのですが、そんな小説ではなく。
口調が今時の若者ぽいせいか、ところどころにツイッターの画面の記述が入るせいか、冒頭からしばらくは出来事の描写が続き、ちょっと退屈やなと思いながら頑張って読んでいきました。
(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});
主人公の内面の描写がおもしろい
面白いなと思い始め、寝ずに読み進めるようになったのは、主人公拓人が心の中でギンジ(元劇団仲間)を批判をしだしたあたりでした。
想像力が足りない人ほど他人に想像力を求める。
などという表現で。
その後、就活をめぐり知りあった隆良に対しても拓人は苦手だ、と考えます。
俺は流されたくないんだよね、就職活動っていう社会の流れに。俺は俺でいきたいから。
などと言ってのける隆良に、拓人は批判的な気持ちを抱きます。
私も、ホンマに隆良って鼻持ちならんやつや、と拓人に同調していました。
襲いかかられました

物語は就活を軸に進み、内定をもらえた者、もらえない者、さまざまな思いが交錯します。
就活生のリアルな心情がつづられ、それはそれで興味深いのですが、読みながらずっと気になっていたのは、やはり裏表紙のキャプションの一文でした。
ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかる。
主人公が誰かに襲いかかるとか、襲いかかられるとかならわかるけど、あなたに襲いかかるってどういうこと?
わけがわからないまま、ようやくラスト30ページに。
最初は意味がわからなかったんです。
何が私に襲いかかってるの?
やがてなんとも恥じ入るような嫌な気持ちになってきて、そうか、こういう事かと気づきました。
作者の狙いはここにあったのか、としてやられた感が満載。
襲いかかられずにすむ人もいるのでしょう。
その人はきっといい人です。
いい人ではない私は悔しいことに襲いかかられてしまいました。
なんとも言えないバツの悪さ。
一昨年話題になって映画化もされた乾くるみの「イニシエーションラブ」も読者に挑戦的ですが、全然違った意味で「何者」も挑戦的な作品。
やられたなー。
何をどうやられたか、それを書いてしまうとまったく読む意味がなくなってしまうのでネタばらしはしません。
奥歯に物が挟まったような表現になることをお許し下さい。
興味があればぜひ読んでみてください。
ただし、襲いかかられることを覚悟のうえで。

【中古】 何者 新潮文庫/朝井リョウ(著者) 【中古】afb
この他の読書感想はこちら
【村田沙耶香の芥川作品『コンビニ人間』が問う“普通”】
【拝啓 有働由美子さま『ウドウロク』読みました】
【『ユリゴコロ』イヤミスを超えた沼田まほかる渾身の傑作】
【三浦しをん『風が強く吹いている』は、箱根駅伝を舞台にしたクレイジーなファンタジー】
【テンション上がりすぎて寝かしつけむけではない?『うんちレストラン』】
【バカバカしさが炸裂!児童書『バカ昔話』】
【流転の海最終章『野の花』に自身の裏切りが重なる】
【二度読み必至のミステリー『お隣さんが殺し屋さん』】